食品保存の基本|冷蔵・冷凍・常温の正しい選び方
2025/05/29

食品を美味しく、無駄なく使い切るために、正しい保存方法を知ることは大切です。自己流の保存が、食品の風味を損ねたり、劣化を早めているかもしれません。また、食品ロスの削減や災害備蓄の観点からも、正しい食品保存の知識は不可欠と言えるでしょう。
この記事では、食品保存の基本を、冷蔵・冷凍・常温それぞれに分けて、わかりやすく解説します。
冷蔵庫での食品保存
冷蔵庫での保存は、食品の安全性を保ち、品質を維持するための重要な手段の一つですが、過信は禁物です。正しい使い方を、改めて確認してみましょう。
食品を詰めすぎない
冷蔵庫に食品を詰め込みすぎると、冷気の循環が悪くなり、庫内全体の冷却効率が低下したり、温度にムラができたりする原因となります。特に、冷風の吹き出し口付近を塞がないように注意しましょう。
ドアの開閉は少なく、素早く
冷蔵庫のドアを開けっ放しにしたり、頻繁に開閉すると、想像以上に庫内の温度は上昇します。食品の出し入れは素早く行い、開けている時間をできるだけ短くするように心がけましょう。
放熱スペースの確保
冷蔵庫は、内部を冷却する際に背面や側面から熱を放出しています。冷蔵庫の周囲に物を置いたり、壁に密着させると、熱がこもり冷却効率が悪化します。取扱説明書で定められた壁や天井との距離を確保することが必要です。
調理済みの食品を保存する場合
- 調理後の食品は、あら熱が取れ次第、密閉容器に入れるかラップで包み、速やかに冷蔵庫へ入れてください。
- 特に大量の食品(カレーや煮物など)は、冷めていく過程で食中毒菌が増殖するリスクが高いため、室温で長時間冷ますのは避けるべきです。食品を浅い容器に小分けにすると、中心部まで早く冷え、冷却時間を短縮するのに効果的です。
- 冷蔵庫で保存した食品も、可能な限り早めに消費することが推奨されます。低温環境でも増殖する菌も存在するため、においや色、味の変化だけでの判断は困難です。冷蔵保存しているからと過信せず、早めに食べきることを心がけてください。
- 食べる際には、食品の中心部まで十分に再加熱してください。
※出典 農林水産省 : 冷蔵庫のかしこい使い方~知ってお得な食品の保存~(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/frige.html)を加工して作成
冷凍庫での食品保存
家庭で食品を長持ちさせるために欠かせない冷凍保存ですが、冷蔵保存と同じく、正しく使うための注意点があります。
食品を冷凍する際の注意点
解凍したときに元の美味しさや品質が損なわれないよう、より良い状態で保存するために、以下の注意が必要です。
■ できるだけ早く凍らせる
食品をあらかじめ冷やしておき、熱が伝わりやすい容器に、食品の厚みがなるべく薄くなるように並べて冷凍しましょう。急速冷凍機能があれば、活用してください。
■ しっかり包む
食品が乾燥したり、油分が酸化したりするのを防ぐために、ラップなどでできるだけ空気を遮断して包みます。
■ 衛生的に扱う
食品を冷凍する前に、手をしっかり洗ったり、使う道具を清潔にして、食品に菌や異物がつかないように注意しましょう。
■ 早めに使い切る
保存中の温度の変化により、品質低下が早く進む場合があるので、2~3週間を目安(食品により変わります)に使い切るようにしてください。
その他、冷凍した食品を解凍する際にも注意が必要です。食品の種類によって解凍・調理方法が異なりますが、室温での解凍は、細菌が急速に増殖する危険性があるため避けましょう。冷蔵庫でゆっくり解凍するとより安全です。
※出典 農林水産省:ホームフリージングする際の注意点について教えてください。(https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1810/01.html)を加工して作成
冷凍に向く食品、向かない食品
いくら正しい方法で冷凍保存をしても、そもそも冷凍に向かない食品は、食感や風味が悪くなり美味しく食べられません。
ホームフリージングに向くもの
乾燥品や加熱処理をしたもの、塩に漬けたものなど、食品中の水分が比較的少ないもの、また、スープやソース類、裏ごしした野菜などですでに組織が壊れているもの、パン、ごはん、もち、納豆なども品質の低下が少ないといわれています。ホームフリージングに向かないもの
食品中の水分が多く細胞組織がしっかりしているもの。(例えば生野菜や魚介類など)特に、お店で解凍して売られている生ものは再凍結することになり、おいしさも栄養も極端に落ちてしまいます。生卵やゆで卵、牛乳や生クリーム、豆腐やこんにゃく、プリンやゼリーなどもホームフリージングが難しい代表的な食品です。
※引用元 一般社団法人日本冷凍食品協会:冷凍食品の取扱い(https://www.reishokukyo.or.jp/frozen-foods/qanda/qanda3/)
常温での食品保存
常温保存とは、食品表示法で具体的に温度が定められているわけではありませんが、一般的には直射日光が当たらず、高温多湿にならない、風通しの良い場所での保存を指します。
生鮮食品
じゃがいも、さつまいも、玉ねぎ(新玉ねぎは除く)、にんにく、かぼちゃ、バナナ(未熟)、アボカド(未熟)などは、常温保存に適しています。また、新聞紙で包むことで、湿気を調整したり、乾燥を防いだり、光を遮断する効果が期待できます。
ただし、夏場の高温多湿の時期は、じゃがいも・玉ねぎなども野菜室での保存が推奨されます。
加工食品
加工食品については、商品のパッケージやラベルに保存方法が記載されていますが、これは開封前が前提です。
消費期限と賞味期限:正しく理解したい2つの期限表示
食品のパッケージには、「消費期限」または「賞味期限」が表示されています。これらは食品表示法で定められており、どちらも、定められた方法で正しく保存した場合の期限を示しますが、その意味は異なります。
消費期限とは「安全に食べられる期限」
袋や容器を開けずに、表示された保存方法を守って保存した場合に、この「年月日」まで「安全に食べられる期限」です。お弁当、サンドイッチ、生めん、ケーキなど、比較的早く品質が劣化しやすい食品に表示されています。消費期限が過ぎた食品は、食べるのを控えましょう。
賞味期限とは「おいしく食べられる期限」
袋や容器を開けずに、表示された保存方法を守って保存した場合に、この「年月日」まで、「おいしく食べられる期限」です。スナック菓子、カップめん、チーズ、缶詰、ペットボトル飲料など、消費期限が表示されている食品に比べ、比較的品質が長持ちする食品に表示されています。
この期限を過ぎても、すぐに食べられなくなるわけではありませんが、風味などが落ちている可能性があります。
これらの違いを理解することは、食品を安全においしく食べ、食品ロスを減らすためにも重要です。
※出典 農林水産省:消費期限と賞味期限(https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/featured/abc2.html)を加工して作成
開封後の保存
食品の賞味期限や保存方法は、未開封の状態を前提として表示されています。食品表示基準でも、賞味期限・消費期限は「表示された保存方法で未開封の場合の期限」と定められています。
開封後は品質が劣化しやすいため、できるだけ早めに消費することが推奨されますが、必要に応じて、開封後の保存方法が「使用上の注意」等の項目で別途表示されている場合もあります。
■ 表示例
保存方法 / 10°C以下で保存してください
開封後の取扱 / 開封後は冷蔵庫で10°C以下で保存し、賞味期限にかかわらず、できるだけ早めにお飲みください
ただし、開封後の保存方法の表示は義務ではなく、品質保持の観点から任意で表示可能です。つまり、保存方法の表示は原則として未開封時の状態を前提としています。開封後は表示内容を確認の上、適切な管理(必要に応じて別途表示された方法での保存)と早めの消費を心がけることが重要です。
※出典 消費者庁:食品表示基準Q&A(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms101_210317_12.pdf)を加工して作成
災害時に備えた食品保存「ローリングストック」
災害発生時には、物流が停止したり、買い物に行けなくなる可能性があります。日頃の備えとして、ローリングストックを実践しましょう。
ローリングストックとは、普段から食べている食品を少し多めに買い置きし、日常的に消費しながら、食べた分を買い足すという方法です。これにより、災害時にも食べ慣れた食事をとることができ、非常食の期限切れも防げます。
災害発生時は炭水化物ばかりになりがち。不足しがちなたんぱく質・ビタミン・ミネラル・食物繊維なども摂取できるよう、バランス良く食品を常備しておきましょう。
ローリングストック用食品:例
- 主食類:パックごはん、乾麺、即席麺、パンの缶詰など
- 主菜・副菜:缶詰(魚・肉・豆・野菜)、カレーなどのレトルト食品、インスタントみそ汁など
- 各種調味料:塩・みそ・しょうゆ・酢・砂糖など
- 飲料水:1人1日約3リットルが目安
- その他:ごま・ふりかけ・はちみつ・ドライフルーツ等
※出典
農林水産省:災害時に備えた食品ストックガイド(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/chapter03.html)
政府広報オンライン:今日からできる食品備蓄ローリングストックの始め方(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202103/2.html)を加工して作成
管理のコツ
備蓄食品は、収納場所を決めておくことが大切です。例えば、キッチンの一角や収納棚の一段を「ローリングストック用」にし、定期的に賞味期限を確認する習慣をつけるとよいでしょう。
また、簡単に作れるローリングストックレシピを用意しておくと便利です。
ローリングストックレシピ:例
サバ缶チャーハン ごまとパックごはんを使ったローリングストックレシピ
食品保存の基本|冷蔵・冷凍・常温の選び方とは:まとめ
食品を無駄なく、安全に美味しくいただくためには、それぞれの食品に適した方法で保存することが大切です。冷蔵、冷凍、常温それぞれの保存方法の基本とコツを理解し、日々の食生活に役立ててください。
また、災害への備えとして、常温で長期保存できる食品の備蓄も忘れずに行いましょう。
出典
農林水産省
冷蔵庫のかしこい使い方~知ってお得な食品の保存~(https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/frige.html)
ホームフリージングする際の注意点について教えてください。(https://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1810/01.html)
災害時に備えた食品ストックガイド(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/chapter03.html)
消費期限と賞味期限(https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/featured/abc2.html)
消費者庁
食品表示基準Q&A(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms101_210317_12.pdf)
政府広報オンライン
今日からできる食品備蓄。ローリングストックの始め方(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202103/2.html)
上記を加工して作成
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