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こんなに違う!日本全国「雑煮」の多様性と食材に込められた新年の願い

おせち料理と並び、正月の食卓に欠かせない雑煮。一年間の無病息災や家内安全、豊作を願う意味が込められています。しかし、その見た目や味付けは千差万別。具材、だし、餅の形など、地域によって驚くほど異なり、地域の数だけ雑煮の種類があると言われるほどです。
この記事では、雑煮の歴史を辿りながら、日本全国を彩る多様な地域ごとの特徴を紹介します。

正月の食卓

1. 雑煮の起源と普及の歴史

雑煮の起源には諸説ありますが、室町時代の京都が発祥という説が有力です。当初、雑煮は正月料理に限定されていたわけではなく、公家のおもてなし料理や、上級武家の慶事料理、また婚礼の席などで酒の肴として提供されていました。
雑煮が身分に関係なく、正月の祝い事として全国的に広まったのは江戸時代からと伝えられています。参勤交代などの文化交流を通じて、雑煮の習慣は全国各地へと波及しました。

初期の雑煮は、京都発祥の文化の影響を強く受け、主に昆布だしを使った白味噌仕立てでしたが、その後、いりこやかつお節などでだしを取るようになり、味付けも醤油仕立てのすまし汁が登場するなど、地域の食材や文化を取り入れた多様な雑煮が確立されていきました。古来より、元日の朝にその年最初の聖なる火で煮た雑煮をいただくことは、人に活力を与える聖なる儀式とされ、家族の結束を固める意味合いも持っていたのです。

2. 日本を分ける餅の東西文化圏

雑煮の多様性を象徴するのが、餅の形状です。日本列島では、雑煮に使われる餅の形によって、大きく東日本と西日本に文化圏が分かれています。

角餅文化圏(東日本)

岐阜県の関ケ原を境に、東側の都道府県では角餅(切り餅)が一般的です。東日本では、平たく伸ばした餅を切り分ける方法が効率的であるため、利便性の高い角餅が定着したと考えられています。また、餅を平らに『のして』切ることが、敵を『のす(打ち負かす)』に通じるという縁起担ぎから、武士の文化として広まったという説もあります。角餅は、焼いてから汁に入れるのが主流です。

丸餅文化圏(西日本)

関ケ原より西の府県では、古来からの形である丸餅を、煮て柔らかくして使うことが多い傾向にあります。丸餅は、「家庭円満」「物事を丸く収める」といった円満への願いが込められています。

ただし例外もあります。西日本でも、参勤交代の影響で江戸文化が入った高知や鹿児島の一部では角餅を使います。逆に東日本でも、海運で京都文化が入った山形県庄内や、餅文化が盛んな岩手県一関では丸餅が主流です。

餅の文化圏

伝統的な正月の餅の食べ方は、鏡餅を飾り「鏡開き」で槌で割って食べます。お雑煮に入れたり、焼き餅や磯辺餅、きなこ餅、お汁粉などで味わい、無病息災や家族の健康を願います。
正月の餅は、つい買いすぎて余りがちですが、様々なアレンジをすることで、飽きることなく食べきることができます。簡単なアレンジレシピや冷凍保存方法などを知っておくと便利です。

参照記事:外はカリッと中はモチモチ!「とろけるきなこ」のあげ餅スナック

3. 地域別に見る個性豊かな雑煮の特徴

雑煮は地産地消の郷土料理として、地場の産物がふんだんに使われ、それぞれの地域の歴史や風土、縁起担ぎが反映されています。全国の雑煮の中から、特徴的な例をピックアップして紹介します。

【北海道・東北地方】海と山の恵み、そして独特の味わい

鶏ガラだし雑煮、仙台雑煮

■ 北海道:鶏ガラだし雑煮

北海道の家々の3分の1強は東北地方にルーツがあり、雑煮の種類も多種多様。札幌では主に鶏ガラベースで、具材は鶏もも肉、大根、人参、ごぼうの千切りなど。砂糖を使った少し甘めのつゆが特徴で、焼いた角餅を入れて食べます。

■ 宮城県:仙台雑煮

仙台雑煮は、江戸時代末期から食される伝統的な雑煮です。最大の特徴は、かつて松島湾でハゼが大量に獲れたことから、焼きハゼで出汁を取り、具材としてお椀からはみ出すほど大きな焼きハゼをのせる点。この習慣は「ハレの日のお祝い料理」としての意味合いがあります。具材には、大根、人参、ごぼうを細切りにして凍らせた「おひきな」や、ハラコ(いくら)、せりなど、彩り豊かな地場産品を使用します。

【関東地方】醤油文化の確立

江戸雑煮、はば雑煮

■ 東京都:江戸雑煮

江戸雑煮は、元禄年間以降に下総の野田や銚子で醤油の生産が盛んになったことで確立されました。昆布とかつお節で取ったすまし汁に、醤油やみりんをしっかり効かせたコクのある味わいが特徴です。具材は鶏もも肉、しいたけ、小松菜、人参、三つ葉などで、香ばしく焼いた角餅を入れます。

■ 千葉県:はば雑煮

千葉県の上総地域、特に山武郡で伝承される「はば雑煮」は、房州産の海藻である「はばのり」を使うのが特徴。焼き餅や茹でた餅をお椀に盛り、だし汁をかけ、はばのり・青のり・削り節をたっぷりかけて食べます。はばのりには「1年中幅を利かすことができる」という縁起担ぎの意味が込められています。

【中部地方】東西文化の交差点

名古屋雑煮南勢地域の雑煮、

■ 愛知県:名古屋雑煮

愛知県、特に名古屋地域では、角餅と尾張の伝統野菜である餅菜(正月菜)をすまし汁でいただくシンプルな雑煮が主流です。餅菜は小松菜に似ていますが、より柔らかく、甘みが特徴です。 愛知の雑煮の大きな特徴は、角餅を焼かずに煮ることです。これには、戦国時代に激戦地であったことから、白い餅を焼くことが「城が焼ける」ことにつながり縁起が悪いとされたため、という説があります。

■ 三重県:中南勢地域の雑煮

三重県は、東日本の文化と西日本の公家文化が混じり合う特殊な地帯です。そのため、地域によって餅の形状(角餅、丸餅、押し餅)や調理法(湯炊き、水炊き、焼き餅)が多様に分かれています。地域により汁の違いがあり、例えば北勢地域では角餅と餅菜のすまし汁、中南勢地域では丸餅と里芋・大根を煮込んだ味噌汁が食べられています。

【関西地方】白味噌と円満の願い

白味噌の雑煮、大和の雑煮

■ 京都府:白味噌の雑煮

雑煮発祥の地とされる京都府では、昆布だしを用いた白味噌仕立て、餅は煮て柔らかくした丸餅が一般的です。 具材は、立身出世を願う里芋、円満を願う丸く切った大根、そして魔除けの意味を持つ鮮やかな赤色の金時人参など、縁起の良い食材が使われます。白味噌は発酵期間が短く塩分が少ないため、まろやかで甘みのある仕上がりになります。

■ 奈良県:大和の雑煮(きな粉餅添え)

奈良県の雑煮も京都と同様に白味噌仕立ての丸餅ですが、雑煮の餅を取り出し、砂糖入りのきなこにつけるという非常にユニークな食べ方があります。きなこの黄色は米の豊作を願う色といわれています。具材には豆腐、人参、里芋、大根を使いますが、奈良県では直径3cm程度の細い大根が、「祝だいこん」として年末に販売されます。

【中国地方】甘い雑煮と海の幸

かき雑煮、小豆雑煮

■ 広島県:かき雑煮

広島県はかきの養殖が盛んな地域であり、広島湾沿岸部などで「かき雑煮」が伝承されています。かきは「福をかき取る、かき寄せる」縁起物とされています。煮干し、昆布、かつお節のすまし汁に丸餅を入れ、かき、大根、人参、かぶなどを加えて煮ます。

■ 島根県:小豆雑煮

島根県では、元旦に岩のりの入ったすまし雑煮を食べる地域がある一方で、正月2日以降には「小豆雑煮」を食べる習慣があります。これは、甘さを控えめに煮た小豆汁に丸餅を入れたもので、「ぜんざい」に近い見た目ですが、あっさりとした甘さが特徴です。小豆の赤色には邪気を払う力があるとされ、縁起物として用いられます。

【四国地方】個性豊かな白味噌仕立て

白味噌雑煮、あんもち雑

■ 徳島県:白味噌雑煮

徳島県の雑煮は個性豊か。丸餅、角餅、だしもすまし仕立てなど多様です。よく食べられているのが、「白味噌雑煮」。煮干しや昆布でとっただしに、白味噌を溶いて仕上げます。具材には餅やかまぼこのほか、人参、大根、小松菜、里芋など豊富な野菜を入れるのも特徴です。

■ 香川県:あんもち雑煮

香川県の雑煮は、全国でも特にユニークで、白味噌仕立ての汁に、なんと甘いあん入りの丸餅を入れます。だしはいりこを使い、輪切りの大根や金時人参(円満を願う)が入ります。 このあん餅の由来は、江戸時代、讃岐地方の特産品だった貴重な砂糖を、庶民が役人に悟られないようにあんこに練り込み餅の中に隠して食べたのが始まりと言われています。

【九州地方】海産物とスピードを追求した知恵

さつまえび雑煮、博多雑煮

■ 鹿児島県:さつまえび雑煮

鹿児島県の薩摩地域で知られる「さつまえび雑煮」は、大きな焼きえび(または干しえび)をのせるのが特徴です。腰の曲がった姿は長寿の象徴とされる縁起物。もともとは薩摩藩主・島津家に献上されていたものが庶民に広まったとされています。だしも同じくえびや干ししいたけから取り、具材はえび、里芋、豆もやし、干しいたけなどを加えます。

■ 福岡県:博多雑煮

博多雑煮は、焼きアゴ(トビウオ)でだしを取り、ブリを入れます。また、高菜の一種でかつお節のような風味を持つかつお菜が欠かせません。餅は小丸餅を使用します。また、年始の来客に手早く振る舞えるように、具材を1人分ずつ竹串に刺して準備しておくというユニークな調理スタイルも特徴です。昔から博多商人の町として知られた福岡で、来客が多く忙しい博多商人のおかみさんたちが生み出した特徴的な調理スタイルの背景には、忙しい商家の知恵があります。

なお、沖縄県では古来から雑煮を食べる習慣がありませんでした。現在でも、一般的な風習としては定着していないようです。

日本全国「雑煮」の多様性と食材に込められた新年の願い:まとめ

雑煮は、餅の形一つとっても関ケ原を境に東西で丸餅と角餅に分かれ、汁の味付けも、まろやかな白味噌仕立てから醤油ベースのすまし汁、さらには小豆を使った甘い汁物や、あんこ入りの餅を入れるものまで、そのバリエーションは尽きません。

日本全国の雑煮の多様さに、「こんなお雑煮があるんだ!」と驚かれたことでしょう。ここで紹介したのはほんの一部で、他にもあらゆる種類のお雑煮が存在します。

日本文化の豊かさと、地域ごとの知恵と工夫の結晶である全国のお雑煮。機会があれば実際に各地を訪れ、その土地ならではの歴史が詰まった特別な一杯を味わってみたいものですね。


出典 農林水産省
うちの郷土料理(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/index.html)
特集2 餅(https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2001)
ハレの日の料理「お雑煮」食材のあれこれ(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/wagohan/articles/2112/spe4_03.html)
を加工して作成

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真誠 編集部

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